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- TamaTの開発事情 -
WordPress運用でぶつかる「壁」の正体と、その先の選択肢

2026.08.05
WordPressは、国内のWebサイトで最も広く使われているCMSです。導入時点では、コストも情報量も開発リソースの確保しやすさも申し分なく、多くの場合で合理的な選択になります。
問題が表面化するのは、運用が3年、5年と続いたあとです。公開時には存在しなかった制約が積み上がり、「更新したいのに手が出せない」「速度を改善したいが構造上どうにもならない」という状態に行き着きます。
ここでは、実際の運用・保守の現場で繰り返し発生する壁を整理し、それがWordPressの中で解決できるものなのか、構成そのものを見直すべきものなのかを切り分けます。
壁1. プラグインが増えるほど、更新できなくなる
WordPressの拡張性はプラグインによって支えられています。フォーム、SEO、キャッシュ、セキュリティ、EC。機能追加のたびにプラグインが増え、10個、20個と積み上がっていきます。
ここで見落とされがちなのは、それぞれのプラグインが独立した開発者によって、独立したサイクルで更新されているという点です。プラグイン同士の組み合わせについて動作保証は存在しません。WordPress本体のメジャーアップデートやPHPのバージョンアップに、すべてのプラグインが同じタイミングで追随するとも限りません。
結果として、次の状態が生まれます。
- アップデートを適用すると、無関係に見える別の機能が停止する
- 検証環境がないため、本番環境で更新して確認するしかない
- 一度事故を起こした経験から、更新そのものを止める
- 更新を止めた結果、既知の脆弱性を抱えたまま運用を続ける
- 古いプラグインに引きずられてPHPのバージョンを上げられず、サーバー側のサポート終了に追われる
これは運用担当者の判断ミスではなく、外部依存が積み上がる構造そのものから生じる問題です。サイトの寿命が長いほど、依存の総量は増え、身動きが取りにくくなります。
実際の案件から
保守を引き継いだサイトで、プラグインもWordPress本体も長期間更新されないまま運用されていた状態に遭遇したことがあります。きっかけはTOPページで発生した原因不明の不具合でした。個別に原因を追うより先に、保守性を確保するためバージョンを最新へ引き上げたところ、症状は解消しました。
ただし、この作業は「更新ボタンを押す」だけでは済みません。本番へ影響を出さないために、ローカルへ各種バージョンを完全に再現した環境を構築し、その上でQAを行ってから適用する必要がありました。更新を止めていた期間が長いほど、再開するための初期コストは大きくなります。
壁2. パフォーマンスは、運用するほど落ちていく
公開直後は快適だったサイトが、数年後に重くなる。これはWordPress運用で最も頻繁に起きる劣化です。
WordPressは、リクエストのたびにPHPがデータベースへ問い合わせ、テンプレートを解釈してHTMLを組み立てます。記事が増え、プラグインが増え、画像が増えれば、1リクエストあたりの処理は素直に重くなります。
対処としてキャッシュプラグインを導入すると、今度は「キャッシュ制御」という新しい運用課題が発生します。更新したのに反映されない、特定のページだけ古い情報が表示される、といった問い合わせ対応が日常業務に加わります。
表示速度の重要性は、検索順位への影響にとどまりません。生成AIが回答の根拠としてWebページを参照する際、バックエンドはページを実際に取得しにいきます。この取得がタイムアウトすれば、そのページは引用候補から物理的に除外されます。速度はスコアを上下させる要素ではなく、引用されるかされないかを分ける合否判定として働きます。AI経由の流入を視野に入れるなら、パフォーマンスは後回しにできる項目ではありません。
壁3. 攻撃されることを前提にした運用が必要になる
普及率の高さは、そのまま攻撃対象としての価値になります。WordPressを狙った自動化された攻撃は常時流れており、管理画面がインターネット上に公開されている以上、その入口を閉じることはできません。
そのため、運用側には継続的な作業が発生します。
- WAFの設定と監視
- 管理画面へのアクセス制限、ログイン試行の制御
- 定期的なバックアップと、復元手順の維持
- 本体・テーマ・プラグインの脆弱性情報の追跡
いずれも売上に直結しない作業ですが、止めると事故の確率が上がります。そして改ざんが一度でも発生すれば、復旧コストに加えて、検索エンジンからの警告表示や取引先への説明といった二次対応が発生します。
壁4. 編集画面が、運用の実態に合わなくなる
「更新しやすいからWordPressにした」はずが、実際の編集作業が属人化しているケースは珍しくありません。
要因はいくつかあります。
カスタムフィールドによる無理な構造化。 本来テーブル設計で表現すべき情報を、フィールドを継ぎ足して表現していくと、編集画面には用途の分かりにくい入力欄が並びます。どこに何を入れるべきかが、実装した人にしかわからない状態になります。
自由度が高すぎること。 本文エリアにHTMLを直接書き込めるため、意図しないレイアウト崩れが起こります。デザインの一貫性を保つ責任が、編集者個人の注意力に委ねられます。
エディタの世代交代。 クラシックエディタ前提で組まれた実装は、ブロックエディタへの移行時に作り直しが必要になります。移行を先送りするほど、選択肢は狭まります。
実際の案件から
あるサイトでは、特定ページの文言を差し替えるという単純な依頼に対して、まず「その内容がどこで定義されているのか」を突き止める工程が必要でした。管理画面から更新できるのか、それともコードを直接書き換えるのか。その判断すら、調べるまでつきません。
実際に確認したところ、WordPressの本文エリアにHTMLが直接記述されている構造でした。この場合、タグの閉じ忘れや
;の有無といった些細な入力ミスが、そのまま表示崩れとして本番に出ます。編集者が「触ると壊れるかもしれない」と感じる状態では、更新は自然と滞ります。
編集画面の使いにくさは、更新頻度の低下という形で静かに効いてきます。更新されないサイトは、どれだけ作り込んでも成果を出しません。
壁5. ページ数・サイト数が増えると、管理が破綻する
ページ数が数千を超えたあたりから、管理画面の一覧表示や検索そのものが重くなります。記事の入れ替えや一括修正のたびに、作業時間が膨らみます。
実際の案件から
数千規模のページを抱えるサイトでは、記事一覧から詳細画面へ遷移するだけで10秒以上待たされることがありました。1回あたりは十数秒でも、記事を行き来したりメディアライブラリを開いたりするたびに発生します。1日の更新作業全体で見れば、待ち時間が作業時間の相当部分を占めることになります。
このサイトはその後microCMSへ移行しましたが、移行後はコンテンツ数の増加によって編集画面の操作性が落ちる現象自体がなくなりました。コンテンツの量と管理画面の重さが切り離された形です。
さらに深刻なのは、サイトが複数に分かれているケースです。ブランドごと、拠点ごと、キャンペーンごとにWordPressを立てていくと、更新作業もセキュリティ対応もサイト数分だけ発生します。マルチサイト機能である程度は集約できますが、一つの障害が全体に波及するリスクと引き換えになります。
壁6. カスタマイズが属人化し、引き継げなくなる
テーマファイルへの直接的な作り込みや、肥大化したfunctions.phpは、担当ベンダーが変わった瞬間にブラックボックスになります。
引き継いだ側は、どこに何が書かれているかを把握するところから始めるため、「小さな改修のはずが見積もりが高い」という状況が生まれます。改修が進まなければ、サイトはさらに古びていきます。
その壁は、WordPressの中で解けるのか
すべての課題が構成変更を必要とするわけではありません。切り分けの基準は「WordPressという仕組みに由来する問題かどうか」です。
運用や実装の改善で対応できるもの
- 検証環境の整備によるアップデート事故の抑制
- 不要プラグインの棚卸しによる依存の削減
- 画像最適化やキャッシュ設定によるパフォーマンス改善
- 編集画面のフィールド整理とマニュアル整備
構成に由来し、WordPressの中では解ききれないもの
- リクエストごとに動的生成する以上、避けられない速度の上限
- 管理画面が公開サーバー上にあることによる攻撃対象面
- 第三者製プラグインへの依存と、それに伴う更新の不確実性
- サイト数の増加に比例して増える保守工数
前者にあてはまるなら、まず現状の改善から着手すべきです。後者が主要な課題になっているなら、改善を積み重ねても構造的な上限に突き当たります。
構成を変えるという選択肢
構造側に原因がある場合の現実的な解が、ヘッドレスCMSと静的生成を組み合わせた構成、いわゆるJamstackです。
閲覧者に配信されるのは、あらかじめ生成された静的ファイルです。表示のたびにデータベースへ問い合わせる処理がないため、速度は構造的に安定します。公開側にPHPもデータベースも存在しないため、攻撃対象面は大きく縮小します。
編集画面はmicroCMSなどのCMSサービス側が提供・保守するため、「プラグインを更新する」という作業自体が消滅します。入力項目はスキーマとして定義されるため、編集者が迷う余地も、想定外のHTMLが混入する余地も減ります。
TamaTでは、約10,000ページ・約600の子サイトを抱えるWordPressサイトを、Next.js × microCMS構成へ移行した実績があります。ページ規模が大きいほど、移行後の運用工数の差は開いていきます。
一方で、この構成がすべてのサイトに適するわけではありません。分単位のリアルタイム更新が要件に含まれる場合や、既存のWordPressプラグインに業務プロセスが強く結びついている場合は、移行によって別の制約を抱えることになります。判断は要件次第です。
現在の運用がどちらの壁にぶつかっているのか。まずはその切り分けからご相談いただけます。
お問い合わせ: https://tamat.jp/contact/
