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- TamaTの開発事情 -
ヘッドレスCMSの選び方 - 導入コストの観点から使い分けを考えてみた
2024.11.14
Webサイト制作
こんにちは!TamaTエンジニアの増田です!
Jamstack構築でWebサイトを開発する際、ヘッドレスCMSの選択は重要な検討事項となります。当社ではmicroCMSとStrapiを採用することが多いですが、プロジェクトの特性に応じて使い分けを行っています。
この記事では、両者の特徴を詳しく解説し、どのような場合にどちらを選択すべきか、実務での知見をもとに解説します。
microCMSとStrapiの基本的な特徴
microCMSは日本の企業が開発・運営するフルマネージドのヘッドレスCMSです。日本語対応が充実しており、直感的な管理画面と堅牢なインフラが特徴です。開発者体験も良好で、APIの利用がスムーズに行えます。公式のドキュメントも豊富ですし、弊社はパートナー提携を結んでいるため柔軟な問い合わせにも対応していただけます。
一方、StrapiはオープンソースのヘッドレスCMSで、Strapi社(フランス)が中心となって開発を進めています。オープンソースなので圧倒的に高いカスタマイズ性と柔軟なAPIデザインが可能で、セルフホスティングによる運用ができます。活発なコミュニティによるサポートも魅力の一つです。
APIとは
ヘッドレスCMSでは、更新が必要なコンテンツの種類ごとにAPIを作成します。言い換えると、Webサイトで更新したい項目の数が、必要なAPI数となります。
例えば、コーポレートサイトで「ニュース」「採用情報」「お問い合わせ」の3セクションを更新可能にしたい場合、3つのAPIが必要になります。
ECサイトの場合は以下のようなAPIが必要になることが多く、API数は増える傾向にあります:
- 商品情報
- カテゴリ
- 商品タグ
- キャンペーン情報
- 特集ページ
- お知らせ
このAPI数が、CMSの選択に大きく影響します。
次の項目では、この観点から両者を比較してみましょう。
API利用量による判断
CMSの選択において、API利用量は重要な判断基準となります。
microCMSは月間のAPI利用量に応じた料金体系を採用しており、小規模から中規模のプロジェクトに適しています。
しかし、API利用量が多くなると状況は変わってきます。
数十個のAPIが必要なシーンではStrapiの採用を検討する価値があります。Strapiはセルフホスティングで運用するため、API利用に制限がなく、大量のリクエストにも対応できます。
具体的に見てみましょう。
開発・運用のコスト比較
microCMSのコスト構造
初期開発コストは比較的低く抑えられます。これは、セットアップが容易で管理画面の構築が不要なためです。また、最安値のプランでは無料で使える上、インフラ管理やバージョンアップ対応が不要なため、保守コストも低く抑えることができます。
一方で、API数が多かったり、高度なセキュリティ要件に対応しようとする(IP制限、監査ログなど)と、高めの月額プランに加入する必要があります。
また、データは特に設定をしなくても自動でバックアップされますが、microCMSのサービスデータの全体を対象として取得されており、個別のデータの復元には対応されていません。個別復元に関しては、標準機能はなく、手動エクスポートが必要となります。
料金体系は API利用量に応じた従量制となっています(2024/11/14時点):
- Free: 月額0円(最大API数3個、メンバー数3人)
- Team: 月額9,900円(最大API数10個、メンバー数3人)
- Business: 月額63,000円(最大API数30個、メンバー数20人、IP制限可能)
- Advanced: 月額150,000円(最大API数50個、メンバー数50人、IP制限可能、監査ログ)
Strapiのコスト構造とインフラ構成
Strapiの場合、API数、メンバー数は無制限です。メンバーは権限付与を行え、他のメンバーの入稿記事は見れないようにする、などの設定も可能です。
CMSそのものは無料で利用できますが、インフラ関連のコストが必要となります。当社では、以下のような構成を採用することが多いです。
Strapiサーバーのホスティング
- Herokuを使用
- Standard-1X〜2X(月額$25〜$50程度)+ Heroku Postgres(月額$50程度)= 合計: 月額$75〜$100(11,000円〜15,000円)程度
画像ストレージ
- AWS S3を採用
- 月額$0.023/GB + Amazon S3 Backup(月額$0.06/GB)= 合計: 月額$0.083/GB(13円/GB)
また、Herokuには豊富なアドオンが用意されており、これらを活用することで、運用に必要な監視やバックアップの体制を容易に整えることができます。
microCMSではBusinessプラン以上でのみ実装できるIP制限や監査ログも取り入れられます。
必要に応じて段階的にアドオンを追加していけるため、プロジェクトの成長に合わせて柔軟にスケールすることが可能です。
このように、更新コンテンツが10個に収まるか否か、どこまでセキュリティや運用上の要件を厳密かするか、といったあたりが採用の判断基準になってくるかと思います。
カスタマイズ性と開発の自由度
microCMSは即座に利用を開始でき、安定した機能を提供します。標準機能が充実しているため、一般的なコンテンツ管理のニーズには十分に対応できます。ただし、カスタマイズには一定の制限があり、独自機能の追加には限界があります。
一方、Strapiは完全なカスタマイズの自由度を持ち、プラグイン開発やデータ構造の柔軟な設計が可能です。例えば以下のようなシーンが挙げられます。
- SNSなどの外部連携
- データアップ時の自動整形
- 在庫管理システムとの同期
プロジェクトタイプ別の推奨選択
microCMSが適するプロジェクト
コーポレートサイトや中小規模のブログ・ニュースサイトでは、microCMSが優れた選択肢となります。
また、早期ローンチが求められるプロジェクトでも、microCMSの容易な導入と運用の特徴が活きてきます。
ECサイトでも、商品数が限定的で、シンプルな商品管理で十分な場合は、microCMSで十分対応可能です。
TamaTの導入事例
Strapiが適するプロジェクト
Strapiは、多数の更新可能なコンテンツ(API)を必要とするプロジェクトに適しています。ニュース、商品、カテゴリ、タグ、キャンペーンなど、多岐にわたるコンテンツを管理する必要がある場合、Strapiのセルフホスティング型の特性により、API数を気にすることなく運用できます。
また、コンテンツ管理の要件が複雑で、独自のビジネスロジックを必要とするプロジェクトでも力を発揮します。データモデルが標準的なものでは収まらない場合、Strapiではそれらを自由に設計できます。コンテンツ同士の複雑な関連付けや、独自の属性を持つデータ構造が必要な場合でも柔軟に対応可能です。
TamaTの導入事例
まとめ
CMSの選択は、プロジェクトの成功に大きく影響を与える重要な決定です。ざっくりとした判断基準では、API数が10個以下で標準的な機能で十分な場合はmicroCMSを、数十個規模のAPIや高度なカスタマイズが必要な場合はStrapiを選択することで、最適な開発・運用が可能となります。
TamaTでは、これらの特徴を踏まえた上で、クライアントのニーズに最適なソリューションを提案しています。プロジェクトの規模や要件に応じて、最適なCMSの選定をサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。